先生からすると、単語一つ一つにとらわれているように思えると思います。私は訳例
を見て、どうしてこのような訳になるのか、いつも想像と推測と臆測で自分を納得さ
せています。これで勉強になっているのかと疑っています。いわゆる、おとしどころ
というのでしょうか、それにいたるプロセスやボーダーラインを知りたいと思います
ので、教えてください。

前にもお話しととおり、翻訳には完璧な正解はありません。

翻訳者によって訳し方が少しずつ違いますし、文の種類によって訳し方を変える必要がありますし、お客様によって好みが違うので、お客様の好みに合わせて訳す必要があります。

したがって、翻訳者は、原文を正しく訳す緻密さと、文章の種類によって訳し方を変えたり、読みやすく文を整えたり、お客様の好みに合わせて文体を変えたりする柔軟性が求められます。

「訳例のここは私の文と違う。どうしてだろう?」と1つ1つ考え込んでもきりがありませんし、そんなことに時間を使っても上達につながりません。

人それぞれ違うのは当然のことです。訳例とあなたの訳文が違うのも当然です。

翻訳の勉強で重要なのは、原文を曲げずに訳すこと、日本語として自然になるように訳すこと、訳語を統一することなど、本講座と添削を通じて繰り返し伝えている「本質」をおさえることです。

「本質」をしっかりおさえて、細部については柔軟に対応することです。

なお、翻訳には、数学の問題を解くみたいに明確なプロセスがあるわけではありません。

それは経験を通じて自分で身に付けるたぐいのスキルですので、誰にも教えることはできません。

また、文書の酒類やお客様の好みによって訳し方を変える必要がある以上、明確なボーダーラインがあるわけではありません。

その都度その都度、柔軟に対応することになります。