翻訳基礎講座を終え、トライアルに挑戦した受講生さんから、3社のうち2社から不合格通知が届いたと相談を受けました。

トライアル課題のどこに問題があったのか、私からアドバイスを差し上げた後にいただいた相談です。

2社から送られたトライアルのために私が提出した翻訳文の添削、また戸田様自身のご意見に心から感謝いたします。

正直なところ、自分はまだ翻訳者として独立できるレベルに達していないのではと感じています。それでこれからのために、いくつかの質問をさせてください。

まず戸田様が指摘された「文章が何を意味しているのかを理解せずに訳する」という点です。

戸田様の言われるとおり、私はこれまで、翻訳作業をすぐに始めていました。翻訳をするべき英文には、いくつかのわからない単語があり、それゆえまず訳し、それから文章を概観するほうがよいのでは、と思ったからです。

今でも専門分野の勉強をしていますが、正直、専門知識と語彙が不足しているせいもあると思いますが、英文をパッと見て、だいたいの意味をつかめるほどまだ私の翻訳また英語のレベルは達していないように思えます。

それで質問は、この面で、進歩するために何をするべきなのかを教えて下さい。

 

講座の添削課題では大きな語訳は見当たらなかったので、トライアルを見て、誤訳があることに少々驚きました。

添削課題の出来具合からは、5社受けると1社くらいは受かるはずと判断しています(課題を提出する前に、訳例を見て修正されていた場合は、この判断は当てはまらない場合がありますが)。

これから何をするべきかですが、まず、基本情報技術者の勉強は一通り最後まで終わらせてください。

次に、トライアル課題への取り組みですが、調査不足です。

「まず訳し、それから文章を概観する」という方法は悪くないと思います。私もいつもそうしています。

しかし、全体を訳した後に、言葉1つ1つの意味を調査して、何について書かれた文章なのかを徹底的に調査する必要があります。

たとえば、「クラウド インプリメンテーションに行く組織」や「ピアーおよび業界最善」などは、何を言っているのか分かりません。

「クラウド インプリメンテーション」とは何か調査しましたか?

試しに「クラウド インプリメンテーション」をGoogleで検索してみると14件しかヒットしません。

つまり、ほとんど誰も「クラウド インプリメンテーション」という言葉を使っていないということです。

次に、ヒットした14件のサイトを見てみると、きちんと書かれたサイトはほとんど見当たりません。

IBMでは「クラウド インプリメンテーション サービス」というサービス名の固有名詞として使っているので、これは参考になりません。

ここだけでも、言葉を調査していないことが分かります。

次に、ここで「peer」とは何を意味しているのでしょうか?

「peer」を辞書で調べると「対等の人, 同輩, 同僚, 仲間, 同等の物, 匹敵する物」と書かれています。

一方、「ピアー」という片仮名語は、「ネットワーク通信において、現在接続している相手のコンピュータや通信機器のこと。また、接続中の2台の機器の組のこと。」と書かれています。

「ピアー」という片仮名語で文脈に合っているでしょうか?

このように言葉1つ1つの意味を調べてから何度も英文を読み直し、何について書かれている文章なのかをしっかり考える必要があります。

そしてさらに、どの訳語を選ぶのが適切かなどを慎重に考えるのです。

次の質問は今後のトライアルについてです。

私はすでに3社のトライアルを受け、すでに2社から返事をいただきました。1社のトライアルはすでに提出し、結果を待っています。
もう1社はまだ提出していません。

このまま翻訳会社を探し、トライアルを受け続けるべきでしょうか。それとも4社の結果がすべてわかり、すべて不合格であるなら、その時点でやめるべきでしょうか。

私は正直、このまま続けても意味はないように感じます。ご意見をお聞かせ下さい。

 

上に説明したように、

1.単語1つ1つを徹底的に調査して、
2.どの訳語が適切かを繰り返し考え、
3.訳文の意味がとおっていことを確認し
4,読者にすっと読めて理解できるかを確認する

ということを徹底するなら、トライアルを続けてもいいと思います。

しかし、先ほどのトライアルように「クラウド インプリメンテーション」の意味もきちんと調べないのでは、続けても不合格になります。

最後の質問は、翻訳上級コースを受けるべきかどうか、ということです。

今回のトライアルで、私の翻訳者としての実力が十分ではないということがはっきりとした場合、私をこれからの進路を決めなければなりません。

今後も翻訳の世界でがんばるのか、それとも進路を変えるべきなのかということです。

このまま翻訳や専門分野の勉強を続けても芽が出ないようなら、そういう選択肢しかないように思えるからです。

ただ、今でも戸田様が説明して下さった、翻訳上級コースの内容は脳裏に焼き付いており、今でも非常に魅力的に感じます。

ただ、このコースを受け、翻訳者としてのレベルアップが本当にできるのか、戸田様の翻訳講座のうたい文句である「お金になる翻訳」が実現するのか、再び100,000円のお金を投資する意味があるのか、私には分かりません。

戸田様は、お金もうけ主義で翻訳講座を行っておられるわけではないと確信していますので、ぜひ、戸田様の率直なご意見をお聞かせ下さい。

 

「翻訳や専門分野の勉強を続けても芽が出ない」ということはないと思います。

はっきり言ってしまえば、「芽が出るまで続けるか、芽が出る前に止めるか」の選択です。

とても難しい選択であることを私も理解しています。

私がトライアルに挑戦していたときは、不合格通知を受け取るたびに「もう諦めて会社員に戻った方がいいのかも?」と悩みました。

その後の人生が決まる選択なので、とても難しい選択でした。

不安になって夜眠れないこともありました。

上級講座で勉強を続ければ、今よりスキルアップすることは間違いありません。

しかし、上級講座が終わった後に翻訳の仕事をバシバシ受注できるようになるかというと、可能生は十分にあるけれど約束はできません。

ですので、上級講座を受講した方がいいとも、止めておけとも言えません。

じっくりと考えてお決めください。