主語と述語を近くに配置する
中学校の英語のクラスで習ったように、英語では文頭に主語があり、そのすぐ後ろに述語(動詞)があります。
簡単な例を挙げると、以下のような具合です。
Ken plays golf every weekend.
(ケンは、毎週ゴルフをします。)
主語は「Ken」で、述語が「plays」にあたります。英語のルールとして、主語と述語は、ほとんどの場合、すぐ隣に位置するのが決まりです。
これに対して、日本語は英語のように厳しい文法ルールがないため、主語と述語をはるか離れた位置に書くことができます。
以下に、先ほどの文をもう一度見てみましょう。
ケンは、毎週ゴルフをします。
この文では、主語は「ケン」で、述語は「します」にあたります。
この程度の短い文なら問題ありませんが、長い文になってくると、主語と述語の間にいろいろな説明が入ると文の意味を把握しにくくなります。
以下の文を見てください。
空気は、装置外部に隣接して配置されたA室と並ぶように
取り付けられているA室より小型のB室に空気中の不純物を
取り除くために取り付けられたフィルターを通過してから排出される。
主語の「空気は」と述語の「通過して」と「排出される」の間に、
フィルターの説明が長々と入っています。
このため、最初に「空気は」という言葉を見たときに、この文は「空気」について書かれているんだなと頭の中に記憶しておいて、その後にフィルターに関する長い説明を読み、どんなフィルターかということを把握してから、「空気は」という主語を思い出して「通過してから排出される」という述語と頭の中でつなげて理解する必要があります。
この文を一度読んで理解できた方は、かなりの読解力をお持ちかと思います。
普通の人であれば、最低でも2度は読む必要があるでしょう。
「自分はこんな文は書かない!」、という声が聞こえそうですが、実際にはこれよりずっと長ったらしい文を書く人は大勢いらっしゃいます。
もっと悪い場合には、「空気は」と文を書き始めておきながら、長々とした説明を書いているうちに書いている本人も何について書いているのか分からなくなったのか、文の途中から、空気のことはまったく忘れ去れて、ぜんぜん違う話が始まっているようなこともあります。
書き手が混乱しているのに、読み手に理解できるはずがありません。
上のような長い文は、以下のようにすると読みやすくなります。
装置外部にA室が隣接して配置されている。このA室に並ぶように、
A室より小型のB室が取り付けられており、このB室には不純物を
取り除くためのフィルターが取り付けられている。空気は、
このフィルターを通過してから排出される。
つまり、必要な場合は長い文を複数の短い文に分割するなどして主語と述語を近い位置に配置することで、文章をずっと読みやすくして、誤訳を防ぐことができるのです。
長い文を書いたからといって、いいことは何一つありません。