実務翻訳者を目指す人におすすめの講座とは?
ツイートこのコンテンツは、10年以上の経験を持つ現役のプロ翻訳者であるアキラが、翻訳の仕事についてきるだけ分かりやすく説明するメディアです。
「実務翻訳者になりたいけど、どの講座を受けたらいいのか分からない」
と悩んでいませんか?
インターネットで検索すると実務翻訳者向けの翻訳講座がたくさん見つかります。
どの実務翻訳講座も良さそうに見えるけど、レッスンの回数や料金などの条件が少しずつ違っていて、いったいどれを選べばいいのか決めるのが難しいと思います。
一度申し込んでしまうと翻訳講座の内容が気に入らなくても返金はしてもらえないので、どれを選ぶかは運を天に任せるしかないと諦めていないでしょうか?
運任せではなく、あなたにピッタリの翻訳講座を選べるように、この記事では、実務翻訳講座を選ぶときに、何を基準に選べばいいか、どんな翻訳講座は避けるべきかについてお話しします。
目次
実務翻訳講座を選ぶときの基準
インターネットや通訳翻訳ジャーナルなどの広告を見ると、魅力的な講座がたくさん見つかります。
でも、よく広告を見かけるという理由から選んだり、大手の会社が運営しているという理由から選んだりすると後悔することになります。
有名な講座で勉強しても、講座を修了した時点で、実務翻訳者になるための基礎を固めることができていなければ意味がないからです。
そこで、実務翻講座を選ぶときは、以下を基準に選ぶことをおすすめします。
- プロ翻訳者の指導を受けられるか
- 納得できるまで質問できるか
- 専門分野の勉強法を学べるか
- 調査方法を学べるか
- 実務に沿った方法で学べるか
- コンピュータの活用法を学べるか
- 仕事を獲得する方法を学べるか
- 取り引き先とのやり取りの仕方を学べるか
以下に、それぞれについて説明します。
プロ翻訳者の指導を受けられるか
私は過去に大手翻訳会社が運営する実務翻訳講座を受けたことがあります。
しかし、添削されて返されてきた課題文を見たときに、がっかりさせられました。
なぜなら、当たり障りのないコメントがチョロチョロと書かれているだけで、本質に迫るアドバイスは何も得ることができなかったからです。
恐らく、添削マニュアルのようなものを見ながら、英語が得意なアルバイトの人が添削したのではないかと想像しています。
プロの実務翻訳者になりたいのに、プロ翻訳者でない人からマニュアル通りのコメントをいただいてもプロの実力に到達することはできません。
とてもガッカリしたので、合計6回の添削課題のうち、最初の2回しか提出せずに止めてしまいました。
でも、
「どうして翻訳者でない人が添削してると言えるんですか?」
と思うかもしれませんね。
1つには、ある程度の翻訳スキルを持った人であれば、添削の内容を見れば「これは素人のコメントだな」と分かります。
また、添削講座の料金を考えると、プロ翻訳者に添削を依頼していたのでは、人件費がかかりすぎて利益があまり出なくなってしまいます。
企業として利益を出すためには、人件費の安い人を選ぶのは当然の選択と言えます。
納得できるまで質問できるか
実務翻訳講座のほとんどは、分からないことを質問できる回数が3回や6回などに限定されています。
このような回数制限が付けられている理由は、回数制限がなければ、
- 自分で考えたらすぐ分かるような質問を大量にする人がいる。
- たくさんの質問に答えていたら、人件費がかかるので利益が出ない。
からです。
このような制限があるために、質問したいことがあっても「後でもっと重要な質問が出てくるかもしれないから止めよう」と考えてしまいます。
しかし、実務翻訳者を目指して勉強しているなら、分からないところを1つ1つ解決していかなえれば、十分な実力を付けることはできません。
また、私が過去に受けた大手の翻訳講座では、質問に対する回答は、1文か2文の簡単な返事が返されるだけでした。
そんな短い回答では問題は解決しないので、もう1度質問し直す必要がありました。
しかし、もう1度質問するには、もう1回分の質問権を使う必要があります。
そんな状態だったので、翻訳講座を受けても問題を解決できず、分からないことだらけになってしまいました。
本気で実務翻訳者を目指して勉強するなら、納得できるまで質問できる講座を選ぶことをおすすめします。
専門分野の勉強法を学べるか
実務翻訳者になるためには、専門分野を持つことが必須とも言えます。
専門分野というのは、ビジネス翻訳をするならビジネスの知識、IT翻訳をするならITの知識というように、翻訳する分野の知識のことです。
専門分野を持っていれば、翻訳会社など仕事を依頼する側は、安心してあなたに翻訳の仕事を任せることができます。
だから、次々と継続的に仕事を受注することができます。
また、他の翻訳家にはできない分野の翻訳ができれば、他の翻訳家より高い料金を受け取ることもできます。
しかし、専門分野を持っていない翻訳家は、誰にでもできる内容の仕事しか受注することができません。
誰にでもできる仕事しかできなければ、他の翻訳者との競争が激しくなるので、仕事が安定しないし料金も安くなります。
だから、実務翻訳家を目指すなら、専門分野の知識は必須なのです。
「でも、IT翻訳講座とか、ビジネス翻訳講座とかあるじゃないですか。あれじゃダメなんですか?」
と思うかもしれませんね。
確かに、IT翻訳講座やビジネス翻訳講座など専門分野に限定した翻訳講座を受講すれば、翻訳スキルと専門知識の両方を同時に身に付けられるように思えます。
でも現実には、IT翻訳講座やビジネス翻訳講座などの専門分野の講座を受けても、翻訳の仕事をするのに必要なだけの専門知識は身に付きません。
こうした専門講座は、翻訳の課題がIT分野の英文であったり、ビジネス分野の英文であったりという程度のものと考えてください。
確かに、その分野の基礎の基礎の基礎程度の知識は身に付きます。
でも、翻訳の仕事に必要なレベルの専門知識は身に付きません。
だから、専門分野の知識を身に付けるには、翻訳講座とは別に自分で勉強する必要があります。
どのように専門分野を勉強すればいいかを学ぶことができる講座を選んでください。
調査方法を学べるか
実務翻訳の仕事で扱う英文は、英語力があればすべて翻訳できるというものではありません。
知らない技術や商品、サービスなど、知らないことが次々と出てくるため、そのたびに調査することになります。
そのため、実務翻訳者のスキルは、調査能力に大きく左右されるとも言えます。
したがって、調査方法を身に付けることができる実務翻訳講座を選ぶことがとても重要です。
実務に沿った方法で学べるか
仮に、あなたは翻訳講座を受けて、プロレベルの翻訳スキルを身に付けたと仮定します。
それで翻訳の仕事ができるでしょうか?
残念ながら、翻訳スキルを持っているだけでは、翻訳の仕事を円滑に行うことはできません。
なぜなら、在宅で翻訳の仕事をするには、
- どのように仕事を受注すればいいか
- どのように仕事を断ればいいか
- どのように翻訳ファイルを扱えばいいか
- どのように納品すればいいか
など、仕事を行うために知っておくべきことがたくさんあるからです。
こうしたことを知らなければ、翻訳スキルを身に付けて仕事を始めようとしたときに、どうしたらいいか分からずに戸惑うことになります。
仕事を通じて学べばいいと思うかもしれませんが、ファイルの取り扱いや納品方法などを知らなければ、取引相手に迷惑をかけることになります。
ですので、特に今までパソコンとメールを多用する仕事をしたことがない場合は、翻訳の勉強と同時に身に付けておくことをおすすめします。
コンピュータの活用法を学べるか
実務翻訳の仕事は、基本的にはMicrosoft Wordなどのワープロソフトで文字を打ち込むことができれば何とかなります。
でも、
- 用語の調べ方
- 辞書ソフトの活用法
- 訳語を統一する方法
- 過去の翻訳資産を活用する方法
など、コンピュータの活用法を知っているかどうかで、翻訳文の正確さと生産性が大きく変わってきます。
正確な翻訳文を作れるか、どれくらいの量を翻訳できるかは、翻訳者の収入に大きく影響します。
このため、コンピュータの活用法を教えるクラスを提供する翻訳スクールもあるくらいです。
実務翻訳者にとってコンピュータの活用スキルはとても重要なので、翻訳講座を選ぶときの選択基準の1つとしてください。
仕事を獲得する方法を学べるか
実務翻訳講座を受けて翻訳スキルを身に付けたとします。
どうやって仕事を受注すればいいでしょうか?
翻訳業界で仕事をしたことのある人でもなければ、どうすればいいのか迷ってしまいます。
せっかく翻訳スキルを身に付けても仕事を始められなければ意味がありませんよね。
だから、どのようにすれば翻訳の仕事を受注できるようになるのか指導してもらえる翻訳講座を選んでください。
翻訳講座によっては、
「講座を修了したら、成績優秀な人には仕事を依頼することがあります」
のようなことを売りにしている会社もあります。
でも、本当に仕事を依頼してもらえるかどうか保証はありません。
また、
「成績優秀な人には、弊社の翻訳研修生になることができます」
のようなことを宣伝している会社もあります。
しかし、非常に安い料金で仕事をやらされたり、研修生になるためにお金を支払わされたりすることがあるので気を付けてください。
しっかりとした翻訳スキルを身に付ければ、翻訳講座を運営している会社に仕事を斡旋してもらったり、研修生になったりしなくても仕事を受注できるようになります。
一番大切なのは、
- しっかりした翻訳スキルを身に付ける。
- 自分で仕事を受注できるようになる。
ということです。
取り引き先とのやり取りの仕方を学べるか
在宅翻訳者として仕事をする場合、翻訳スキルだけでなく取り引き先とのコミュニケーション能力も重要です。
翻訳の仕事も人間と人間のやり取りであるため、誰しもコミュニケーション能力の低い人とは仕事をしたくないからです。
では、取り引き先とのやり取りはどのように行えばいいのでしょうか?
- 取り引き先には電話をかけるべきなのか?
- メールを送るべきなのか?
- どんな文面のメールを送るべきなのか?
- 仕事を断るときは、どんなふうに断れば、また依頼があるのか?
- 継続的に仕事の依頼が来るようにするには、どんなメールを送ればいいのか?
など、在宅翻訳者として成功するためには、様々なノウハウがあります。
知っているかどうかで大きな違いが出ます。
もし、自分で失敗を経験しながら学びたいならそれもかまいません。
でも、翻訳講座で学べるなら、無駄な試行錯誤をしなくて済みます。
実務翻訳者を目指す人におすすめの講座とは?
この記事では、実務翻訳講座を選ぶときに、何を基準に選べばいいか、どんな翻訳講座は避けるべきかについてお話ししました。
翻訳講座を選ぶときは、以下を基準に選ぶことでハズレを引く可能性が格段に低くなります。
- プロ翻訳者の指導を受けられるか
- 納得できるまで質問できるか
- 専門分野の勉強法を学べるか
- 調査方法を学べるか
- 実務に沿った方法で学べるか
- コンピュータの活用法を学べるか
- 仕事を獲得する方法を学べるか
- 取り引き先とのやり取りの仕方を学べるか
すべての条件を満たす翻訳講座を見つけるのは難しいかもしれません。
でも、せっかくお金と時間を投資するのですから、できるだけ妥協せずに納得のいく翻訳講座を選ぶことをおすすめします。