翻訳家になるための通信講座の選び方
ツイートこのコンテンツは、10年以上の経験を持つ現役のプロ翻訳者であるアキラが、翻訳の仕事についてきるだけ分かりやすく説明するメディアです。
「翻訳の通信講座を受けたいけど、どの講座がいいのか分からない?」
「翻訳講座を受けるだけで、プロの翻訳者になれるのかな?」
と悩んでいませんか?
インターネットで検索すれば、たくさんの翻訳の通信講座が見つかるし、有名なところではユーキャンも翻訳講座を提供しています。
どの通信講座も魅力的に見えますが、何を基準に通信講座を選べばいいのでしょうか?
また、そういった通信講座を受けて、本当にプロ翻訳者になるだけの実力が身に付くのでしょうか?
実力が身に付いたとして、翻訳の仕事を継続的に受注することはできるのでしょうか?
この記事では、実績もコネもゼロの状態からプロ翻訳者になった筆者が、翻訳者になるのにおすすめの通信講座の選び方を説明します。
2種類の翻訳
翻訳の通信講座について説明する前に、翻訳には大きく分けて2種類あることを説明します。
「文芸翻訳」と「実務翻訳」です。
文芸翻訳とは、映画や小説など文芸作品を翻訳する仕事です。
実務翻訳とは、企業で発生する書類を主に翻訳する仕事です。
この記事では、筆者が実務翻訳者であるため実務翻訳の講座についてお話ししますが、翻訳講座の選び方については文芸翻訳家を目指している方も参考になるはずです。
翻訳者になる方法
翻訳者になるには、大きく分けて以下の3つの方法があります。
- 翻訳会社に就職する。
- 企業の翻訳部門に就職する。
- 翻訳スクールに通学する。
- 翻訳の通信講座を受講する。
翻訳会社や企業の翻訳部門に就職すれば、翻訳の仕事をすることになるのは確実ですが、おそらく20代の人でなければ難しいと思われます。
私自身は、最初はアメリカ留学中に、企業の翻訳部門で字幕翻訳の研修生として仕事を始めました。
その後、帰国してから翻訳スクールと通信講座で勉強し、翻訳者として独立しました。
今、日本で会社員や主婦などをされている方が翻訳の仕事を始めるなら、翻訳スクールに通学するか、翻訳の通信講座で勉強するのが現実的です。
翻訳スクールと翻訳講座は、基本的に学習内容は同じですが、翻訳スクールには以下のメリットがあります。
- 翻訳の先生から翻訳の現場について話を聞ける。
- 分からないことは納得するまで質問できる。
- 同じ目標を持つ友達ができるので刺激になる。
通信講座での勉強は孤独になりがちなので、勉強仲間ができることは大きなメリットです。
しかし、翻訳スクールは、東京や大阪のような大都市にしかない上に、決められた日時に通学しなければいけないというデメリットがあります。
一方、翻訳の通信講座の場合は、勉強する時間や場所の制限がないというメリットがあります。
仕事や家事が忙しい方や、東京や大阪などの大都市以外にお住まいの方は、必然的に通信講座を受講することになります。
翻訳家になるのに通信講座を受けるだけで十分か?
翻訳を勉強した経験も実績もない人が、通信講座で勉強するだけでプロ翻訳者になれるでしょうか?
最初に答えを言ってしまえば、翻訳の通信講座でしっかり勉強すればプロ翻訳者になることができます。
私が指導する通信講座を受講される方は、ほとんどが翻訳の学習経験すらない初心者の方ばかりです。
でも、半年から1年という短期間に翻訳会社のトライアルに合格し、仕事を開始される方もいらっしゃいます。
個人差が大きいので、どれくらいの期間がかかるかは断言できませんが、通信講座でも翻訳者として十分なスキルを身に付けることができます。
「翻訳の仕事をした経験がないから翻訳者になるのは無理」と最初から諦める人が多いようです。
でも、経験ゼロから通信講座で勉強を始めても翻訳者になることはできます。
翻訳講座を選ぶときの基準
インターネットで検索すれば、たくさんの翻訳講座が見つかります。
どれも魅力的に見えるので、どれを選べばいいのか悩むのではないでしょうか?
そこで、翻訳の通信講座を選ぶときに失敗しない基準をお話しします。
通信講座を選ぶときは、以下の点を確認してください。
- プロ翻訳者の指導を受けられるか
- 納得できるまで質問できるか
- 専門分野の勉強法を学べるか
- 調査方法を学べるか
- 実務に沿った方法で学べるか
- コンピュータの活用法を学べるか
- 仕事を獲得する方法を学べるか
- 取り引き先とのやり取りの仕方を学べるか
それぞれについて、以下に詳しく説明します。
プロ翻訳者の指導を受けられるか
翻訳講座なのだから、当然プロ翻訳者の指導を受けられると考えていては失敗します。
なぜなら、指導方法をマニュアル化して、英語が得意なだけで翻訳者としての実力のない人に、添削や質問の回答をやらせていることも考えられるからです。
私自身の経験を話します。
どの翻訳スクールに行くべきか迷っていたとき、ある大手の翻訳スクールに行って、受け付けで「翻訳の指導をしているのはどんな人か」を質問しました。
受け付けの女性の返事は、「当スクールの卒業生」ということでした。
プロとして翻訳の仕事をしている人か質問すると、「していない」とのことでした。
つまり、翻訳の仕事をした経験のない素人が、翻訳講座の先生をしていました。
また、別の大手企業が提供する通信講座を受けたときは、添削が返されてきたので楽しみにして見てみると、当たり障りのないマニュアルどおりのコメントが書かれているだけでした。
プロの翻訳者が添削したのではないことは明らかでした。
講座の運営側としては、プロ翻訳者に指導を任せると人件費が高くつくので、できるだけ人件費の安い人に仕事を依頼しているのだと思います。
しかし、素人の指導を受けてプロになれるとは思えませんので、翻訳講座を選ぶときは必ず確認しましょう。
納得できるまで質問できるか
通信講座で勉強していると、必ず分からないことが出てきます。
そんなときに、気兼ねせずに質問できる講座を選ぶことをおすすめします。
講座によっては、何となく質問しにくい雰囲気にあったり、質問できる回数が3回など制限されているために質問しにくいということがあります。
分からないことを解決できなければ翻訳講座を受ける意味がないので、納得できるまで質問できる講座がおすすめです。
専門分野の勉強法を学べるか
実務翻訳の仕事を始めるには、翻訳スキルに加えて専門分野の知識を持っていることも重要です。
たとえば、コンピュータや法律、ビジネスなど、他の人より詳しい分野があれば、仕事を安定的に受注できるからです。
翻訳講座によっては、IT翻訳講座、ビジネス翻訳講座など、専門分野に特化されているものもあります。
しかし、こういった専門分野の講座を受講しても、専門分野の知識が身に付くわけではありません。
現実は、
- IT翻訳講座を受けたら、IT関連の英文が課題に出る
- ビジネス翻訳講座を受けたら、ビジネス関連の英文が課題に出る
という程度です。
もちろん、専門分野のことを学べるような英文が課題に使われますが、それだけで十分な専門知識を身に付けられることはありません。
だから、どのような通信講座を受けるにしても、翻訳の勉強とは別に専門分野の勉強をする必要があります。
翻訳の仕事に必要な専門分野の知識は、どのように勉強すれば身に付けることができるのか?
それを学べる翻訳講座を受けることが大切です。
調査方法を学べるか
翻訳の仕事をしていると、分からないことが必ず出てきます。
たとえば、ビジネス翻訳をしているときにプログラミングの話題が出てくる可能性もあります。
そんなとき、プロ翻訳者であればプログラミングについてインターネットや書籍で調査して、文脈に合った適切な訳文を作る必要があります。
そのため、翻訳者にとって調査スキルは必須です。
翻訳に必須のスキルを学べない講座は、翻訳講座としてはイマイチとしか言いようがありません。
実務に沿った方法で学べるか
現在、翻訳の仕事は、ほぼすべてコンピュータとインターネットを使って行われます。
一般的な手順としては、
- メールで仕事の依頼を受けて、
- インターネットを通じて文書を受け取り、
- 自宅のパソコンで翻訳して、
- インターネットを通じて納品する
という具合です。
翻訳講座の内容も、この手順を学べるものでなければ、実際に仕事を始めたときに困ることになります。
たとえば、通信講座によっては、
- 印刷された書籍で課題が郵送されてきて、
- 手書きで翻訳文を書き、
- 完成した課題を郵送する
という手順を踏む講座もあります。
インターネットが普及する前のワープロを使っていた時代であれば、このような講座でも現実的ですが、今となってはこのような講座では現実的なスキルを身に付けることはできません。
翻訳者として仕事を始めたときに困らないためには、実務に沿った形で翻訳を学べる講座を受ける必要があります。
コンピュータの活用法を学べるか
正確な翻訳を効率的に行うためには、コンピュータを最大限に活用することが必須です。
- 効率的に入力するためにはどうすればいいのか
- 言葉の意味を一瞬で検索するにはどうすればいいのか
- 過去に翻訳した文章を活用するにはどうすればいいのか
- パソコンが壊れたときにはどう対応すればいいのか
など、翻訳の仕事をする上で重要なことがたくさんあります。
こうしたことを知っているのと知らないのとでは、仕事のスピードや出来映えに大きな違いが出てきます。
仕事を獲得する方法を学べるか
「翻訳の勉強はしたけど、どうやって仕事を始めたらいいのか分からない」
というのでは困りますよね。
取り引き先を見つけて仕事をしなければ、翻訳の勉強をする意味がありません。
- どうすれば仕事を獲得できるのか
- 継続的に仕事を受注するにはどうすればいいのか
を学べなければ、翻訳スキルが身に付いても仕事がないという状態になってしまいます。
取り引き先とのやり取りの仕方を学べるか
取り引き先と、どのようにやり取りするかによって、仕事を継続的に受注できるか、それとも一回だけ仕事を依頼されて終わりになるかが決まります。
取り引き先との関係を良好な状態に保つには、メールや電話、手紙をどのように活用するかはとても大切です。
通信講座は、翻訳スキルを学べるだけではダメ
このページでは、翻訳家になるためには、何を基準に通信講座を選べばいいかを説明しました。
通信講座を選ぶときには、以下の点をしっかりと確認してください。
- プロ翻訳者の指導を受けられるか
- 納得できるまで質問できるか
- 専門分野の勉強法を学べるか
- 調査方法を学べるか
- 実務に沿った方法で学べるか
- コンピュータの活用法を学べるか
- 仕事を獲得する方法を学べるか
- 取り引き先とのやり取りの仕方を学べるか
趣味レベルの翻訳をするのであれば、テキトウに通信講座を選んでもかまいません。
でも、翻訳の仕事をしたいのであれば、これらはとても重要ですので、通信講座を選ぶときに必ず確認してください。