翻訳家に最短でなるための勉強法は?
ツイートこのコンテンツは、10年以上の経験を持つ現役のプロ翻訳者であるアキラが、翻訳の仕事についてきるだけ分かりやすく説明するメディアです。
「どんな勉強をすれば翻訳家になれるのかな?」
「最短で翻訳家になる勉強法を知りたい!」
翻訳の仕事に興味を持った人であれば、誰でもそんなふうに考えるはずです。
でも、翻訳者になるための勉強法を教えてくれる人ってなかなかいないんですよね。
だから、
「とりあえず英語を勉強してTOEICで高得点を取れるようになろう」
とか
「翻訳の通信講座を受けよう」
という結論になると思います。
でも、TOEICで高得点を取れるようになっても、翻訳の通信講座を受けても、プロ翻訳者になれる人は多くありません。
また、夢がかなって翻訳者になれた人でも、必要でない勉強に時間と労力を費やしてしまい、長い時間を無駄にしてしまっています。
この記事では、無駄な勉強をすることなく、最短で英和翻訳家になるための勉強法についてお話しします。
必要なことだけに限定して勉強することで、無駄な労力と時間を費やす必要がなくなります。
翻訳家になりたいと考えている方は参考にしてください。
翻訳家になるためには何を勉強すればいいの?
翻訳家になるためには、何を勉強すればいいでしょうか?
「そりゃ、英語でしょ!」
当然ですね。
英語が分からなければ翻訳の仕事ができるわけがありません。
でも、英語の中でも何が大切で、何が必要ないか分かりますか?
必要ないことを勉強するのに時間を費やしていては、翻訳家になれる日はなかなかやってきません。
そこで、ここでは翻訳家になるために必要な勉強について説明します。
翻訳家になるためには、以下のスキルを身に付ける必要があります。
- 英語力
- 日本語力
- 翻訳スキル
以下に、それぞれについて説明します。
どんな英語力が必要か?
英語力は、大きく以下の4つに分類できます。
- リーディング
- スピーキング
- リスニング
- ライティング
以下に、それぞれについて説明します。
リーディング
翻訳者になるために重要なのは、リーディング力です。
リーディング力を伸ばすためには、文法力と単語力、英文を読むことに対する慣れが必要です。
リーディング力を伸ばすために必要なこと
- 文法力
- 単語力
- 英文を読むことに対する慣れ
翻訳の仕事には、どれくらいの文法力が必要か?
文法の勉強は、正確に英文を読むために必須です。
翻訳の仕事をするためには、英文を読んだときに何となく意味が分かるというレベルではなく、筆者の意図をしっかりと理解できる必要があります。
そのためには、文法知識は必須です。
また、翻訳文を作るときにも、文法の知識がなければ実務翻訳のルールに沿った訳文を作ることはできません。
だから、文法知識は必須なのです。
「翻訳の仕事をするには、さぞかし高度な文法知識が必要なのでは?」
と想像されているなら安心してください。
翻訳の仕事は、高校レベルの文法知識があれば大丈夫です。
というのも、日本の高校ではかなり高度な文法まで踏み込んで勉強します。
だから、高校レベルの文法を身に付ければ、その辺のネイティブより詳しくなってしまうからです。
また、翻訳の仕事をしていて分からないところがあれば、ロイヤル英文法のような文法書やインターネットで調べれば分かります。
なお、文法の勉強は、書店で売られている文法の教材を読んで勉強すれば十分です。
どれくらいの単語力が必要か?
単語をたくさん知っていれば、英文の理解度が高まるし、英文を読むスピードが速くなります。
だから、単語をたくさん知っているほど翻訳の仕事には有利になります。
でも、翻訳の仕事をするときには辞書を使うことができます。
しかも、パソコンに辞書ソフトをインストールしておけば、ほんの数秒で数十冊の辞書を一度に引くこともできます。
ですので、翻訳の勉強をするために単語を大量に覚えるのは、あまり効率のいい方法ではありません。
もちろん、基本的な単語は覚える必要がありますが、将来的に使うかどうか分からないような難しい単語を覚えるのは時間の無駄になります。
ですので、基本的な単語を覚えたら、英文を読んでいてよく出てくる単語を覚えるという程度で問題ありません。
英文を読むことに対する慣れ
英文を読むとき、日本語に翻訳してから理解するレベルの読解力では、筆者の意図を正確に読み取ることはできません。
英文を読んだら、英語のまま理解できるようになって初めて、筆者の意図を理解できるようになってきます。
ですので、英文を多読して英文を読むことに慣れる必要があります。
英字新聞を読んだり、専門分野にしたいと考えている分野のウェブサイトを読んだりするなどして、できるだけたくさん英文を読むことが大切です。
ライティング
日本語から英語への翻訳をするのであれば、高度な英文ライティング力が必要です。
でも、英語から日本語への翻訳では、英文を書く機会はあまりないため高度な英文ライティング力は必要ありません。
しかし、日本語から英語への翻訳を練習すると、英文を読んでいるときには見落としがちな冠詞(a/an/the)や前置詞(at/in/of/forなど)などの理解が深まります。
このため、英文ライティングの練習を取り入れることは英和翻訳の上達につながります。
ただし、必ずしも必要ではないため、最短で翻訳者になるための勉強法としては、優先度は低くなります。
スピーキング
「翻訳の仕事をするならスピーキングもできなれば恥ずかしい」
と考えてスピーキングを練習する方もいらっしゃるようです。
でも、自分で外国の出版社と交渉するのでもないかぎり、翻訳の仕事では英会話をする機会はまったくありません。
ですので、翻訳家になるための勉強法としては、スピーキングの練習は不要です。
もし、「翻訳の仕事をしています。でも、英語は話せません」と言うのが恥ずかしいなら、最初に翻訳者として仕事ができるようになってから、英会話の練習をするのが正しい順序です。
リスニング
翻訳の仕事は読み書きすることなので、リスニング力は必要ありません。
私の経験では、十数年翻訳の仕事をしてきて、ほんの数回だけリスニングが必要な機会がありました。
プレゼンテーションのスピーチを日本語に翻訳する仕事を引き受けたときです。
そのときでも、スピーチの動画とともに英文のスクリプトを渡されたので、英文の文字おこしから始める必要はありませんでした。
動画を見て、何を強調しているかなど雰囲気を把握する程度でした。
また、このようなリスニング力が求められる仕事は、仕事の依頼時に、リスニングが必要なことが伝えられます。
ですので、できないと思えば断れば問題ありません。
なお、翻訳の仕事を始めるときに、TOEICで高得点を取っていれば英語力を証明する助けになります。
だから、リスニングの練習がすべて無駄になるとは言えません。
しかし、TOEICの受験経験がなくても翻訳の仕事は始められるので、リスニングの練習は、最短で翻訳家になるための勉強法としては優先度は低くなります。
日本語を話せるだけでは足りない?
翻訳者を目指す人がもっとも軽視しているように思えるのが日本語力です。
「日本人なのだから日本語は得意」
「今まで仕事で日本語の文章を書いてきたので自信がある」
という人が多いようです。
でも、翻訳家は文章を書いて報酬を受け取るわけですから、素人レベルの文章力では十分ではありません。
翻訳家は、プロとして通用するレベルの文章力が求められます。
ただし、実務翻訳で求められるのは、小説家のような「人の心を動かす文章力」ではなく、「正確で読みやすい日本語文を書くための文章力」です。
正確で読みやすい日本語文は、練習すれば書けるようになります。
練習方法として効果があるのは、手本となる日本語文を筆写することです。
つまり、ビジネス翻訳ができるようになりたいなら、手本となる日本語のビジネス文書を見ながらノートに手書きします。
筆写は単調な作業ですが、しばらく続けていると一生役に立つ文章力を身に付けることができます。
翻訳スキルとは?
「英語と日本語ができれば翻訳もできる」と考えている人が多いようですが、そういうものではありません。
英語と日本語ができる上に、翻訳スキルを身に付ける必要があります。
翻訳スキルは、主に以下の3つに分けることができます。
- 翻訳文を作るスキル
- 専門知識
- 調査能力
以下に、それぞれについて説明します。
翻訳文を作るスキル
実務翻訳では、学校で習う英文和訳とは違い、自然な文章で筆者の意図を正確に伝える必要があります。
また、実務翻訳独特のルールもたくさんあります。
ですので、我流で勉強しただけでは身に付けることはできません。
書店で売られている翻訳の入門書を読んで練習するという方法もあります。
しかし、自分が書いた翻訳文が実務翻訳として正しいかどうかは、自分では判断することができません。
だから、翻訳を専門に教える学校に通学したり、翻訳の通信教育講座を受講するなどして学ぶ必要があります。
専門知識
「英語が得意なら、英語で書かれていることをすべて理解できる」
と思いがちですが、現実は、英文を読むことができても英文を理解できないことはよくあります。
日本語で書かれている文書を読むときのことを思い出してください。
「文章を読めるけど、何を言っているのか理解できない」
ということがあるはずです。
文章を読めるけれど理解できないのは、背景知識がないことが原因です。
たとえば、経済の知識がない人なら、経済について書かれた文章を読んでも理解することはできません。
理解できない文章をムリヤリ翻訳しても、それを読んだ読者も理解できない翻訳文ができてしまいます。
だから、翻訳したい分野の専門知識を身に付けることは必須です。
専門知識を身に付けるには、書店で売られている本を読んでください。
最初は、「はじめての〜」、「〜入門」のような簡単な本から読み始めて、少しずつ専門性の高い本を読んでいけば、翻訳に必要な専門知識を身に付けることができます。
調査能力
頑張って専門知識を身に付けても、翻訳の仕事をしていると、どうしても知らないことが出てきます。
一昔前は、図書館や大型書店で調べていましたが、今はインターネットで検索すれば大抵のことは見つかります。
翻訳の仕事で求められる調査能力は、美味しいレストランを見つけるという程度のスキルでは足りません。
専門的な情報を日本語サイトと英語サイトから見つけ出す必要があります。
インターネットを使った調査能力は、基本的な検索方法を学んだら、後は経験を積むことで上達します。
基本的な検索方法は、「Google 検索オプション」と検索すると解説サイトが見つかります。
最短で翻訳家になるための勉強法
この記事では、最短で翻訳家になるための勉強法についてお話ししました。
翻訳家になるためには、以下のスキルを身に付ける必要があります。
- 英語力
- 日本語力
- 翻訳スキル
これらのスキルを無駄なく身に付けると、最短で翻訳の仕事を始められるようになります。
この記事が、あなたが翻訳者になるための勉強の参考になれば嬉しく思います。