翻訳家の仕事に将来性はあるか?
ツイートこのコンテンツは、10年以上の経験を持つ現役のプロ翻訳者であるアキラが、翻訳の仕事についてきるだけ分かりやすく説明するメディアです。
翻訳家としての仕事に将来性はあるのでしょうか?
せっかく気合いを入れて勉強して翻訳者になっても、翻訳の仕事自体がなくなっては意味がないので気になるところです。
10年後、20年後のことについては、100%確信を持って言える人は誰もいません。
そこでここでは、この記事を書いている時点(2017年3月)での私の考えをお話しします。
パソコンが普及する前と、今とでは翻訳の仕事は大きく変わりました。
昔は、紙の辞書をペラペラめくりながら原稿用紙に翻訳文を書くのが普通でした。
それが、ワープロで入力するようになり、インターネットが普及した今は、パソコンで作業してネット経由で納品するのが常識です。
しかも、翻訳の仕事では、翻訳ソフトや翻訳支援ソフトを使うのが普通です。
翻訳ソフトというのは「Google翻訳」のように外国語を自動的に翻訳してくれるソフトのことです。
翻訳支援ソフトというのは、過去に翻訳した文章をデータベースに登録しておいて、新しい翻訳作業のときに過去訳を参考にできるようにするソフトのことです。
有名な翻訳支援ソフトとしては「TRADOS」があります。
翻訳ソフトと翻訳支援ソフトを使うことで、今までは人間が手作業で行っていた作業の大半をコンピュータに任せられるようになりました。
翻訳の仕事はなくなるのか?
「翻訳ソフトや翻訳支援ソフトが普及すると、翻訳の仕事はなくなるのでは?」
という疑問があると思います。
私の考えは「No」です。
なぜなら、機械には文脈を理解する能力がないからです。
翻訳ソフトでは、文法を解析して言葉を置き換えることで翻訳を行います。
この方法では、機械的に言葉を置き換えるだけであり、文脈は考慮されていません。
もちろん、
「この文章はIT関連だから、IT関連の単語を使って翻訳しよう。」
という程度の文脈の解析能力はありますが、人間のように内容を理解することはできません。
また、翻訳ソフトは文法に基づいて翻訳していますが、原文を書く人が文法に忠実に文章を書くとは限りません。
現実世界では、文法を無視した文章がたくさんあります。
コンピュータでは、文法を無視した文章を正しく訳すことができないため、誤訳や変な翻訳文ができあがってしまいます。
このような理由から、コンピュータが人間の翻訳者と同じように翻訳できるようになるには、人間と同じレベルの理解力を持った人工知能が必要になります。
「人工知能が発達したら、やっぱり翻訳の仕事はなくなるんじゃないか!」
と思ったあなたはよく考えてください。
人間と同じレベルの理解力を持った人工知能が登場したら、翻訳だけでなく、この世にあるほとんどの仕事はなくなってしまいます。
ITが発展しても生き残ることができる翻訳者とは
翻訳ソフトの性能はどんどん良くなっていくので、「内容を理解できればいい」という程度の文書なら、翻訳者に頼まずに翻訳ソフトで間に合わせる人が増える可能性があります。
実際に、外国のウェブサイトの内容を確認するくらいなら、Google翻訳を使う人が増えています。
そうなると、翻訳者の存在意義は、機械ではできないことに求められるようになります。
つまり、
- 文脈や筆者の意図を正しく理解して、正しく翻訳すること
- より読みやすい文章を書くこと
- より専門性の高い文章を正しく訳せること
です。
そうなると、三流の翻訳者の仕事は翻訳ソフトに取られてしまうので、腕のいい翻訳者だけが生き残ることになります。